やけどの治療に変化の兆し

2001年8月26日

 暑い日が続きますが、この暑い季節でも「やけど」の患者さんは数多く来院します。やけどは熱による皮膚の組織障害ですが、その発症および治療には、これまで分らないことが多くありました。
 高熱で損傷した皮膚は、熱が去った後も持続的に活性酸素を発生させます。この活性酸素は細菌を殺すと同時に、やけど周囲の健康な組織をも破壊する力があります。受傷後三十分は冷水などで温度を下げ、活性酸素の発生を抑えます。
 こうしてやけどの進行を止め、処置に移ります。やけどの傷を乾燥させ表面にかさぶたを作ると、傷は約〇・五ミリ深くなることが最近分かりました。そこで、やけどの傷を乾燥から防ぐ新しい方法「閉鎖性ドレッシング法」を選択します。このとき用いるのが、ハイドロコロイドドレッシング材という板状のドレッシング材(傷を覆うもの)です。
 これを用いると、やけどはかさぶたを作らずに治り、不思議なことにやけどの痛みもなくなります。実はやけどになると皮膚の防御機能が壊れ、乾燥のような軽い刺激でも痛く感じるのです。ドレッシング材でやけどの部位を密閉し、乾燥などの外部刺激を避けることで痛みがなくなると考えられています。
 日本は世界でもいち早く、二十年前からこのドレッシング材が医療保険で使えます。痛みがなく早くきれいに治すこのドレッシング材は、今後急速に普及するでしょう。