サルコペニアとメタボリックシンドローム

2017年5月21日

 年をとって筋肉量が減り、同時に筋力や身体機能も低下した状態を「サルコペニア」と呼びます。サルコペニアでは運動不足と低栄養が重なっており、転倒や骨折がおこりやすく、病気からの回復力も低下し、死亡率が高くなります。
 予防には筋力強化運動が有効ですが、低栄養状態で運動すれば、皮肉なことにかえって筋肉は減っていきます。筋力をつけて身体機能を高めるには、適切な栄養補助と筋力強化運動を同時にしなければなりません。
 栄養療法と運動療法を同時に行うことが大切というと、メタボリックシンドローム対策と同じです。メタボリックシンドロームは内臓脂肪が蓄積した状態で、高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病と重なり、心臓や脳の病気になり、死亡する危険が高くなります。
 実はメタボリックシンドロームの方は、中年期における栄養過剰と運動不足が原因ですが、中高年期になり病気やけが・手術などで食事量が減ると、そのままサルコペニアに移行します。
 対策としては、中年期に運動習慣を付けることであり、65歳を超えたら肉や魚などのタンパク質をしっかり取りつつ、空腹でないときに筋力強化運動をします。筋力強化運動として勧められるのは、立ち上がり運動です。安定性の良い椅子に座った状態から立って、また座るという繰り返し運動です。身体が不安定な方は、机などにつかまりながら行います。まずは1日30回からはじめ、100回まで増やしていきます。さらに1日に200回を目指します。これは毎日行うことが大切です。テレビを見ながらや、歯を磨きながらなど、「ながら運動」としてやると継続できます。
 いずれも運動の前か後にタンパク質を十分に取っておくことが大切です。最近はタンパク質を10グラム程度含む栄養補助食品が多くみられるようになりましたが、このような理由によるものです。
 既に病気を持つ方は、運動療法については理学療法士か作業療法士、栄養療法については管理栄養士などの専門職の意見を聞きながらおこなうことが勧められます。