胃カメラ、経鼻か経口か?

2012年12月16日

 日本は世界一、胃がんが治りやすい国になりました。それは早期に発見されるからで、胃内視鏡検査の普及と関係があります。例えば、早期胃がんでは99%の治癒率(5年生存率)ですが、進行した胃がんでは50%以下になってしまいます。治療法が進歩しても早期発見が大切です。
  とは言っても、胃内視鏡検査が辛かったため二度としたくない方や、苦痛と聞いて躊躇する方も多いようです。でも胃内視鏡検査は進歩しています。苦痛のより少ない麻酔法や検査法が一般化しました。また機器の進歩により、今では9ミリ以下の太さになりました。さらに5ミリのものが開発され、鼻からの検査も可能になりました。それぞれの検査の利点と欠点を考えてみましょう。
  経口内視鏡はやや太くて硬いため、のどを刺激し吐き気をおこします。利点としては、画像が鮮明であること、鉗子孔という器具を通す管が太く、ポリープを取るなどの処置が行えることです。またある程度の硬さがあるので、観察が容易で組織を取る検査も短時間で行え、検査時間が短くなります。
  経鼻内視鏡は柔らかく、のどへの刺激が少ないため、吐き気はほとんどありません。余裕が出て、自分の胃の観察を希望される方もいらっしゃいます。しかし、画質はやや悪いことと、鉗子孔が細いため、組織検査はできても処置はできません。内視鏡が柔らかいことで、見にくい場所の観察に時間を割く必要があり、また胃液の吸引や送気にも時間がかかるため、検査時間は1.5~2倍になります。鼻腔が狭い方では、鼻出血や鼻の痛みを伴うことがあります。ごく稀に鼻の麻酔薬でめまいを生じることもあります。とは言え、口からの検査で大変な苦痛を経験した方にとって、鼻からの検査はウソのように楽な検査です。
  いずれにしても、ある程度の年齢になれば定期的な胃内視鏡検査が勧められますが、そのときに口からか、鼻からかを選べることは、日本の科学技術の成果であり、喜ばしいことと思います。