第30回 閉鎖性ドレッシング法が褥創局所療法の基本である理由

2007年11月1日

 褥創は寝たきりになり自分で体位変換ができない方に多く発症します。好発部位は仙骨尾骨部で、寝ている時にどうしても持続的な圧迫が避けえない場所です。このような部位に発生する褥創(創傷)のドレッシングにあたって、いくつか注意しなければいけないことがあります。

ドレッシングの厚さ

 褥創発生の原因には圧迫が関与しているため、治療を行ううえで圧迫の軽減が大変重要です。そのために圧力を分散する目的で体圧分散寝具(エアーマットレス)が用いられます。
 局所療法を行ううえでもドレッシングの厚さが大変重要になってきます。従来からよく使われてきた「軟膏をつけてガーゼを用い、テープで固定する」という方法はどうでしょうか。この場合、ガーゼ1~2枚では外部から汚染しやすいため5~6枚のガーゼがあてがわれます。しかしこれではガーゼの厚みのために、一番体圧分散を図らなければいけない褥創部への圧迫が強くなってしまいます。
 ガーゼを用いる場合は圧迫回避のため、ガーゼの枚数を最低の1枚にしたいものです。すると外部汚染を防ぐ工夫が必要ですが、その目的のためにフィルムドレッシング材を用います。オプサイトやテガダームなどの製品が代表的ですが、最近ではロールタイプの安いものもあります。
 すなわち創傷面をなるべく越えない程度に切った小さいガーゼ1枚に軟膏をつけて用い、全体をフィルム材で密閉固定するのです。これによってドレッシングの厚さは気にならなくなります。なおガーゼを1枚も用いず、軟膏を創面に塗布後、直接フィルム材貼付でも構わないでしょう。
 創からの滲出液が多い時の工夫として、フィルム材にあらかじめ18Gピンク針で穴を開けておく方法も勧められます。

外部汚染の予防

 仙骨尾骨部は便や尿によって汚染し、あるいは汗などで汚れやすい部位です。ガーゼでは何枚重ねても容易に汚れは通ってしまいます。ドレッシングの厚みを減らす目的でフィルム材を勧めましたが、このフィルム材には、皮膚から水蒸気となって出る汗を通すものの、細菌や便や尿・水を通さない程度の極めて小さな穴が開いています。このことにより褥創周囲の皮膚にフィルム材を貼付しても固着部の皮膚が浸軟する(ふやける)ことは無く、かつ外部からの汚染をブロックしてくれます。
 とは言っても、創からの滲出液が多いとフィルム材の脇から漏れて剥れの原因になることがあります。この場合はドレッシング交換すればよいのですが、先に紹介したようにフィルム材にピンク針で穴を開けておくことで過剰な滲出液を針穴から排出し、これを吸収パッドやオムツで受けることでも対応できます。この場合には針穴から便や尿がフィルム材の下へ入る危険はありますが、思うほど逆流はしないようです。

軟膏を創に効かせる

 褥創の病態としては、感染した褥創、壊死のある褥創、肉芽に被われた褥創等いろいろな病期があり、この病期ごとにドレッシングの目的は異なり、ドレッシングも変えていきます。軟膏を用いる場合も、それぞれの病期に応じた目的(感染のコントロール、壊死組織の除去、肉芽の盛上げなど)によって軟膏を使い分けていきます。これらの軟膏はもちろん創傷面にできるだけ長時間接触してこそ効果を発揮します。
 ではガーゼを用いた従来の方法はどうでしょうか。創傷面にたっぷりと軟膏を用いても、ガーゼをあてがった場合、それら軟膏はガーゼに吸い取られ、創面にはほとんど軟膏は残っていません。 創面に残る軟膏を多くするためには、軟膏吸収素材であるガーゼの量を少なくする必要がありますが、薄いガーゼでは外部からの汚染に弱くなってしまいます。ここでガーゼを1枚にし、創の大きさにガーゼを最小にカットして軟膏を用い、それをフィルム材で密閉閉鎖する方法の優れた点を説明します。
 ガーゼの量が最低であるため、ガーゼが吸収する軟膏は少なくなり、ほとんどの軟膏は創面に残ります。またフィルム材でカバーするため、ガーゼを通り越して外へ軟膏が漏れていくこともありません。なおガーゼ無しで軟膏塗布後、直接フィルム材貼付でもかまいません。
 以上の方法は感染した褥創の軟膏療法において特に有効で、殺菌剤軟膏であるカデックス軟膏・ユーパスタ軟膏・ゲーベンクリーム等を使うときに必須の方法です。 この場合も滲出液が多いとフィルム材が剥れて脇から漏れてきますが、1日2回くらいであればその都度交換していけばよいでしょう。

摩擦によるドレッシング材の剥れ予防

 褥創を発症している方でもそうでない方でも、完全に寝かせきりにすると呼吸(肺)に悪く脳循環にも悪影響のあることから、体位変換や上体の挙上(ギャッチアップ)が適宜行われれます。このような時、仙骨尾骨部には横方向の力(ズレ)が生じます。このズレの力によって、体表には摩擦力が働き、せっかく貼ったドレッシングは剥れてしまいます。特にガーゼのように摩擦が強くテープ固定のような線での固定では、弱い摩擦力でもドレッシングはめくれ、簡単に剥れてしまいます。
 この点、薄いガーゼを用いてフィルム材で固定した場合、広い面での固定となるため、多少の摩擦ではドレッシングの剥れは予防されます。
 フィルム材を用いても剥れる強い摩擦力がある場合は、より強固な固定を考えるより、摩擦とズレは褥創の発症原因であり難治化する要因であることから、ズレ・摩擦を少なくする対策を早急に行います。

閉鎖性ドレッシング法

 以上のように褥創の治療において、フィルム材を使って軟膏を創面にとどめ、厚みを少なくして、摩擦にも強く、汚染しにくい方法を閉鎖性ドレッシング法と呼んでいます。
 この閉鎖性ドレッシング法は褥創に限らずどのような創傷にも有用な方法ですが、特に褥創においてその有利さが目立ちます。
 この閉鎖性ドレッシング法を行うにあたっての注意点をいくつか挙げます。まずフィルム材を使うことからフィルム材の接着を阻害する油性軟膏は一般的に用いません。つまりワセリン系基剤軟膏であるゲンタシン軟膏・プロスタンディン軟膏等は使用しません。フィルム材と相性が良いのは、クリーム材であるゲーベンクリーム・オルセノン軟膏・リフラップ軟膏や、水溶性軟膏であるカデックス軟膏・ユーパスタ軟膏・ブロメライン軟膏・ソフレットゲル軟膏・アクトシン軟膏等です。
 また軟膏を用いた閉鎖性ドレッシング法を行う場合は、1日1~2回のドレッシング交換が原則で、交換の度に充分な量の洗浄液で創面を洗浄することが大切です。

さいごに

 褥創の局所療法において、この閉鎖性ドレッシング法に慣れることをお勧めします。なお、より具体的に知りたい方は拙著「閉鎖性ドレッシング法による褥創ケア(南江堂」を御参照下さい。