高岡市医師会報掲載記事  
   
               

北日本新聞掲載記事
※本Websiteに掲載されている画像、文章等の無断使用・転載を一切禁止します。
便秘はひょっとしたらあなたの責任?
 3食とっていても1週間に1回下剤で硬い便を出している人がいます。高齢者にも多いようです。便秘は硬便がつきもので、切れ痔(じ)になることで排便恐怖症になる方もいらっしゃいます。なぜこのようになるのでしょうか。
 便は大腸で水分が取られて硬くなり、S状結腸と直腸で形が整います。直腸に便が貯まると便意が起こり、トイレへ行けばスルリと便が出ます。
 便を我慢すると便意は消え、水分が吸収されていきます。便が硬くなるには、水分摂取不足も関与します。
 人が生きるためには、1日2500ミリリットル水分が必要です。食事中には約1000ミリリットルの水分が含まれるため、1500ミリリットル程度の飲水がすすめられます。飲水が少ないと、不足分を便から取るため便は硬くなります。この時下剤を飲んでも、体はすぐ慣れて、より多くの下剤が必要になるだけです。もし下剤が勝って、脱水にもかかわらず便が軟らかくなったら、むしろ大変危険な状態です。
 では300〜500ミリリットルを一気飲みで1日に3回とったらどうでしょうか。急に大量の水分をとると、体は尿を出すホルモンを増やし、一気に尿が出て再び脱水に戻ります。水分は1時間に1回50〜100ミリリットル程度をこまめにとるのがコツです。
 水分を十分にとり、便意があったらすぐトイレへ行けば、便秘はかなり防げるはずです。逆に水分をとらず便を我慢すれば、当然便秘になります。
 ついでに言うと、便中には発がん物質が排出されます。便秘では濃縮した発がん物質が長時間腸壁に接触し、大腸がんのリスクが高くなります。こまめな水分摂取は、快便とともに大腸がん予防にもなるのです。
2009年12月20日(日)掲載
 
大腸がんを恐れない
 現在死因の一位はがんですが、中でも大腸がんの比率は高く、女性では一位となっています。大腸がん治療後の五年生存率は、早期がんの場合は100%です。リンパ節転移があると転移の広がりによって70%、60%と低下します。腹膜・肝臓・肺などに転移のある方でも四人に一人は五年以上生きられます。最近では普通の生活を送りながら、外来で抗がん剤の点滴を受ける外来化学療法が普及し、がんと共に生きる考えが広まっています。
 とはいえ、少しでも早く大腸がんを発見し、治療するに越したことはありません。
 大腸がんは国民の0.2%前後にみられますが、便潜血検査で陽性の方では3%と多くなります。便潜血検査の弱点は、早期がんの半数、進行がんで約10%が陰性になることです。
 このような問題はあっても、大規模調査では便潜血検査を受けた人は受けなかった人と比べ、大腸がんによる死亡が七割も減っていました。これは便潜血検査によって、より早期に発見し手術すると、治癒率が八〜九割と良好になるためです。年1回は便潜血検査を受けることが推奨されています。
 便潜血検査で陽性になった方は大腸内視鏡検査を受けることで、がんを早い時期に発見できるようになります。大腸内視鏡検査は痛いといわれていますが、機器の進歩と技術の平準化でかなり楽になっています。便潜血検査で陽性でなくても、大腸がんを患っている血縁者がいる方なども三〜五年に一回、大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
2009年5月17日(日)掲載
 
かぜ予防に、うがいとマスクはやはり有効
 かぜは鼻水を介してうつることが注目されています。
 我々は知らず知らずのうちにしょっちゅう鼻を触る動物のようです。かぜをひいた人も鼻を触り、その手でいろいろなところに触れます。逆に、いろいろなところを触った手で知らずに鼻を触るので、これが原因でかぜはうつるようです。
 うがいはかぜ予防に効果があると報告されました。理由が分析され、面白い結果が出ています。つまり、うがいをする時には必ず手も洗います。この手洗いによって手に付いた菌やウイルスが除去されるからだというのです。外出から戻った時の手洗いの重要性が分かります。
 マスクも大切です。最近のマスクは細菌を通さない素材になっていますが、ウイルスに対しては特殊なマスクが必要です。でもどのようなマスクでも、着けると鼻を触らなくなります。これは大変有効だと考えられます。マスクをして外出し、マスクを外すと同時に手を洗い、うがいをする。これでかなりかぜが防げるのではないでしょうか。いま心配されている新型インフルエンザが流行しても、これは同じです。
 昔から言われている「かぜ予防にはうがいと手洗い。また外出時にはマスクをしましょう」には十分な根拠があったのです。先人は本当に偉いと思います。
2008年12月21日(日)掲載
 
骨盤底筋体操で快適な排便を
 大変痛い切れ痔(じ)は排便法で楽になることがあります。
 私たちが便意をもよおしても便はまだ肛門付近には到達していません。ここで我慢せずにトイレに入ると、便は肛門へと下がり括約(かつやく)筋は緩みます。軽くいきんでもいきまなくても、蠕動(ぜんどう)運動によって便は自然に出てきます。これが自然な排便法です。
 ところが最近は、排便に時間をかけられず、トイレで一気にいきんで出す人が少なくありません。この時、便は肛門へと勢いよく下降します。便を漏らすまいと括約筋は反射的に収縮し、固くなった肛門を便が勢いよく通るため、軟便であっても粘膜が傷つき、切れ痔が始まります。これが繰り返されると、潰瘍(かいよう)化し難治性の裂孔(切れ痔)になってしまいます。括約筋は厚く硬くなり、柔軟性も低下して一日中痛くなります。こうなると、括約筋は弛緩(しかん)すべき時に収縮し、収縮すべき時に弛緩するなど、本来と逆の動きをするようになります。切れ痔の患者に肛門括約筋の機能検査をすると、ほとんどに機能異常がありました。
 切れ痔の中には、排便法で改善する例があります。具体的には、肛門を締める運動(骨盤底筋体操)を毎日何回もすることで括約筋の機能が正常になります。そして肛門が緩む感覚が分かるようになり、肛門が開いた状態で無理なく排便できるようになります。
 ちなみにこの骨盤底筋体操は、女性の尿失禁治療に使われますが、女性はもとより男性にもさまざまなメリットがある優れた体操です。
2008年5月18日(日)掲載
 
うつ病対策は人に優しい会社作り
 今や自殺者は一日八百三十人(交通事故死の約三倍)に達し、死亡する国民のうち三十人に一人が自殺者という重大な事態になっています。しかも三十代後半から五十代がピークで、会社にとって重大な損失となります。自殺に至らなくてもうつ病を発症してしまった場合、休職期間は半年以上必要となります。かといって、仕事量を減らし、人員を増やす対策では企業活動が低下し現実的ではありません。職場におけるメンタルヘルスケアとして、予防・早期発見・治療の重要性が認識されてきました。ストレスの原因としては「心理的ノルマ」と「時間の拘束」が挙げられています。
 心理的ノルマを減らすには、上司がひたすら仕事を命令するのではなく、仕事の意義を伝え、自らの意志で仕事をし、達成感を得られるようにすることが大切です。また、上司が帰るまで部下が帰らないなどは問題外で、仕事が早く終わった者は早く帰るなど、時間的裁量権を与えることで拘束感が減るのです。
 「心理的ノルマ」を減らし「時間的裁量権」を与えることで得られるストレス減少効果は「仕事を減らす」場合の三倍もあり、効率的です。
 また決定的なうつ病となる前に身体的異常を伴わない身体症状(心気症)や胃潰瘍や喘息などの病気(心身症)が初期症状としてみられます。この段階で薬物療法と職場環境の調整などを開始することが大切です。これが最新のメンタルヘルス対策です。
 しかし、時間外労働が月百時間を越えるような過重労働では睡眠時間は一日五時間未満となり、脳溢血や心筋梗塞による死亡率が高くなることがわかりました。これらは労災死として認定されます。
 いずれにしても過重労働を避け、メンタルヘルス対策を行うことは企業にとっても家族にとっても大切な人を失わないために大変有益な対策です。
2007年12月16日(日)掲載
 
糖尿病でありがとう
 「糖尿病になると人生真っ暗。人生の楽しみ全てをあきらめ、仙人のような生活になる」と思っていませんか。糖尿病になるとしなければいけないことは、三食しっかり食べること。間食をしないこと。夜七時半以降はカロリーのある物は口にしないことです。夜遅くならなければお酒も飲めます。また毎日少しでも歩くこと。週一〜二回はしっかり運動することです。そのうえで、ある人は薬を飲み、ある人はインスリン注射をする。で、これは楽しくない人生でしょうか。
 まもしこのようなことを糖尿病でない人が守らなければどうなるでしょう。夜十時過ぎにピザやラーメンを食べ、午前様でお酒を飲む。運動は全くしないで朝食を抜く。これでは血液データが正常でも病気になる可能性があります。実は、当たり前の生活をして楽しく元気に過ごすことが糖尿病の治療なのです。
 糖尿病以外の人はこの生活を守らなくても血液データに異常が出ず、突然病気になります。糖尿病の人はこの生活を守らないと、血液データ(HbA1c)が悪化してすぐ分かります。HbA1cを6.5以下、できれば5.8以下にコントロールすれば、百歳以上まで元気に生きることが出来ます。これって実は幸せではないでしょうか。だって生活の乱れがすぐに数値で分かるのですから。数値を良い値にするかしないかは自分の責任。自分が決めることです。
 自分で人生を決めるきっかけを作ってくれて、やっぱり「糖尿病でありがとう」と言えるのではないでしょうか。ちなみに糖尿病でもコントロールができていれば、月一回くらい完全に羽目を外しても影響はありません。無礼講を楽しめるのも糖尿病だから。やっぱり「糖尿病でありがとう」ではないでしょうか。
2007年9月16日(日)掲載
 
糖尿病では膵臓を休めることが大切
 膵臓から分泌されるホルモンのインスリン量が不足し、体のバランスを維持できなくなった状態が糖尿病です。したがって全ての糖尿病の治療は、この不足するインスリンを補う方法なのです。
 理想的な糖尿病治療は、膵臓を休ませて元気にするとともに、膵臓の出すインスリンを有効に使って体のバランスを維持することです。
 まずは、夜遅く(午後8時以降)にカロリーのあるものを摂らないことが大切です。この時間帯に栄養を摂ると、夜中から翌日までずっと高血糖になるため、膵臓はインスリンを出し続け疲れ切ってしまい、昼間も血糖値を下げることができなくなってしまうのです。
 次にやることは3食しっかり食べるとともに、間食をしないことです。
 これらは消極的な膵臓の保護ですが、積極的な治療は運動です。運動をすると体の細胞はインスリンをうまく使えるようになり、少量のインスリンでも体のバランスが維持しやすくなるのです。また運動によって筋肉量が増えると、筋肉が糖を消費するため、血糖値が上がりにくくなります。
 そして重要なのは運動の時間帯です。糖尿病の合併症発症にとっては、高血糖と低血糖の繰り返しが良くないのです。どうせ運動をするのであれば、一番血糖値が上がる食後30分から1時間の間に運動することを勧めます。逆に運動時間として一番悪いのは、血糖値が一番下がっている食直前(空腹時)です。いずれも、血糖値が高い時に運動をし、血糖値が低い時には血糖値を下げる運動を控えることで、血糖値の変動を少なくすることができます。さらにもう一つ、運動は夕食後から寝る前の時間帯が最も有効です。
 ついでにもう一つ、糖尿病早期のインスリン注射は膵臓を一時的に休ませ元気にする方法の一つです。最近は膵臓に優しい内服薬もあります。食事療法・運動療法・インスリン注射のいずれもが同じ理論(膵臓をいたわる方法)の元に行われるのです。
2007年5月20日(日)掲載
 
禁煙は決意が大切
 平成18年4月よりたばこをやめられないことが病気として認められ、禁煙への支援が医療保険でできるようになりました。この機に乗じて禁煙をしようと思っている「あなた」、実は禁煙はそんなに簡単ではないのです。でも「決意したあなた」にとっては、意外と成功率は高いのです。成功の鍵は「なぜ禁煙をするのか」という自らの決意にあります。逆に医師や家族など、自分以外からの繰り返す脅迫は全く効果がありません。
 禁煙をすると二つの苦痛が襲ってきます。「身体的依存」と「精神的依存」です。ニコチンに長時間さらされたあと禁煙をすると「吐き気」「頭痛」等さまざまな肉体的苦痛が起こります。これが身体的依存ですが、現代医療は「ニコチンパッチ」という薬によって、ほぼ100%解決してくれます。問題は「精神的依存」です。これは自分で乗り越えるしかありませんが、このとき重要なのは「なぜやめるのか」という動機です。この自らの決心の源となった動機を繰り返し思い出すことができれば、精神的依存を乗り越えるのはそれほどつらいものではありません。
 ところで禁煙には隠れた敵がいます。それは食欲です。禁煙によって食べ物がおいしくてたまらなくなり肥満がやって来ます。禁煙の開始とともに、アメ玉を含めすべての間食や夜食を我慢することが必要です。精神的な依存や空腹対策としては、氷を入れた水を飲むのが有効と言われています。
 禁煙外来では二週間ごとの短期目標を繰り返しながら二ヶ月半で禁煙成功を勝ち取るプログラムが組まれています。禁煙外来を行っている病院や診療所では駐車場を含め敷地内は禁煙となっており、全職員も事実上禁煙しています。東京では病院に出入りするタクシーまでもが禁煙タクシーのみになっているようです。さあ「決意したあなた」www.e-kinen.jpに公開されている禁煙外来にさっそく行ってみましょう。
2006年12月17日(日)掲載
 
水分補給の重要性
 私たちの体は細胞の集まりでできていますが、すべての細胞の内部環境は一定になっています。これは細胞内に老廃物などができても直ちに血液など細胞外液に排出されるためですが、このとき水は重要な役割をします。細胞から血液中に捨てられた不要物は、水の移動とともに尿成分として、主に腎臓の働きで体から排出されるのです。このように、細胞集合体の生命を維持するには、尿量を一定以上に保つ必要があります。尿量は一日1,500ml以上が理想で、500mlは危険状態です。尿の他に汗(不感蒸発)として皮膚から1,000mlが出て、皮膚の乾燥予防と体温調節に使われますので、体からは総量として2,500ml程度の水が失われることになります。
 ところで、私たちは食事に含まれる水分として1,000ml以上を、飮水として1,500ml程度を摂っているので、普通に飲食していれば脱水にはなりません。しかし、風邪などの病気で食欲が低下し、飲食による総水分摂取量が1,000ml以下になると、尿量低下と発汗減少(皮膚や舌の乾燥)が起こり、意識が朦朧としてきます。
 特に高齢者では普段から飮水の少ない方が多く、容易に脱水になるため、これらの症状がみられたら直ちに静脈から点滴輸液を行う必要があります。最近、点滴液に類似した経口補水液(OS-1等)が市販されましたので、これらを飲むことで、点滴をせずに済む例もあります。
2006年5月21日(日)掲載
 
タンパク質摂取と傷治療
 私たちの体の細胞はタンパク質で作られ、新陳代謝というタンパク質合成によって絶えず新しい細胞と置きかわっています。体のタンパク質は窒素を含む関係上、糖質や脂質から作ることはできず、二十種類のアミノ酸を組み合わせて作られています。
 これらタンパク質合成の材料となるアミノ酸は、食事の中に含まれるタンパク質が小腸で分解・吸収されることで、得ることができます。傷が治るときにも、タンパク質合成で新しい組織ができ、傷んだ組織が修復されていきます。
 では、食事中のタンパク質が足りなくなるとどうなるのでしょうか。重要臓器の新陳代謝(タンパク質合成)を行うため、自らのタンパク質(主に筋肉)を分解して、アミノ酸が作り出されます。このようなとき、傷は体の重要臓器とは認識されないために、修復は行われなくなり、できたばかりの新しい組織も分解して悪化していきます。従って、大きな傷をした時だけでなく、重労働や過重な運動をした後も、タンパク質を十分に取っておく必要があるのです。
 一方、タンパク質を過剰に取った場合、余ったタンパク質は肝臓で分解されます。このとき、タンパク質に含まれる窒素からアンモニアという毒物が作られますが、ただちに毒性の低い尿素に変わります。アンモニアは肝臓に負担をかけ、尿素は腎臓に負担をかけます。
 タンパク質は不足しても、取りすぎてもいけないのです。あまり運動をしない人では、一日の摂取カロリー量は1,600kcal位で、タンパク質量は65gくらいが良いと言えるでしょう。
2005年12月18日(日)掲載
 
「おお怖! メタボリックシンドローム」
 血管の老化である動脈硬化によって心筋梗塞や脳梗塞がおきますが、危険因子として高脂血症・高血圧・糖尿病・喫煙・遺伝因子・ストレス・加齢などが指摘されています。それぞれの危険因子は軽症でも、複数あると動脈硬化は飛躍的に進行します。しかし、多数の危険因子が偶然重なるのではなく、共通の発症基盤である内臓脂肪蓄積が最も重要だと分ってきました。
 内臓脂肪蓄積はウエスト周囲径と関連があり、男性では85cm、女性では90cm以上が危険域で、これに高中性脂肪・低HDL(高比重リポタンパク)・高血圧・高血糖を加えた五項目のうち三つを満たすとメタボリックシンドロームという危険な状態です。治療薬服用中でも危険因子と考えます。日本ではこの危険な状態にある人が一千万人を超えると考えられており、十代でも増えています。
 治療には何と言ってもライフスタイルの改善が優先され、補助として薬物療法が行われます。生活改善は一人ひとりに応じたきめ細やかさが必要で、標準体重の維持を目標に、適度な運動と食事に対する知識を身に付けることが大切です。また自分の意思とは関係なくたばこの煙を吸わされる受動喫煙も含めて禁煙が大切で、ストレス対策としての休養も忘れてはなりません。
 食事療法としては、十分な食物繊維の摂取、カロリーの多い脂質や糖質の制限、夜遅くの飲食禁止等をしますが、自己流の食事制限ではなく、管理栄養士など専門家と相談しながら無理なく行うことを勧めます。体重5%程度の減量でもメタボリックシンドローム危険因子の改善が得られるそうです。
2005年6月19日(日)掲載
 
「夜食は有害?」
 いつでも十分に飲食できるようになったのは、ここ百年くらいのことでしょう。過酷な自然淘汰の名残で、私たちの体は食べられるときにはいっぱい食べ、余った栄養を脂肪として蓄えるようなつくりになっています。夜は動かないので、この脂肪への変換がより進むようになっています。これが体の日内リズムです。
 とはいえ、夜間は他の動物から襲われる可能性もあります。危険が生じ、すぐに逃げなければならないとき、すぐに使える栄養素はブドウ糖です。ですから私たちの体は夜間、血糖値が下がりにくい仕組みにもなっています。つまり、夜は血中の脂肪が上昇しやすいと同時に、血糖値は下がりにくいようになっているのです。この変化は、夜七時を境に始まると言われています。
 しかし人類の体は近年、夜遅く高栄養価の食べ物を自由に毎日摂れるようになったという革命的な事態に直面しています。
夜遅く食事をすると、肝臓では食べたものから脂肪やコレステロールがどんどん作られて身体に脂肪が蓄積し、高いコレステロール値が持続、高脂血症と肥満および脂肪肝へ一直線です。同時に夜間の血糖値は高めに維持され、朝御飯もまずくなってしまいます。まして糖尿病の人は、夜を通して高血糖が持続します。今や八人に一人が糖尿病になりうる状態であり、夜遅い食事は厳に慎むべきでしょう。受験生にも、夜遅くの高カロリーの食べ物は勧められません。
2004年12月19日(日)掲載
 
「一般家庭向けのキズパッドの功罪」
 キズが治るときは、傷の中で細胞が分裂増殖し、新しい組織が傷の中を埋め、皮膚が覆います。それには湿潤して外部から守られた環境(閉鎖湿潤環境)が必要です。この目的で開発されたドレッシング材(傷を覆う医療用具)にハイドロコロイドドレッシング材があり、1987年に医療用具として保険で使えるようになりました。
 ハイドロコロイドドレッシング材は柔軟性があり、板状で少し厚みがあります。傷の大きさより少し大きいものを貼り付けることで傷から出てくる浸出液をため込み、人工的な水疱(すいほう)を作ります。この人工的な水疱には細菌の増殖を抑え、傷を治す増殖因子を保持し、細胞分裂を促進する効果が証明されています。その結果、傷の痛みはほとんど無くなり、傷が早くきれいに治る画期的なものです。
 今までハイドロコロイドドレッシング材は医師しか使うことができませんでしたが、最近、一般家庭向けにドラッグストアでも買えるキズパッドとして発売されました。今後、すり傷や浅い切りキズ、浅いやけどなどで便利さを実感する人もいると思います。
 しかし、このような画期的な製品を使うには傷処置の基本を守る必要があります。傷処置の基本は(1)傷の中の汚れを水道水でしっかり洗い流すこと(2)キズパッドで密閉するときは消毒はせず、軟膏も併用しないこと(3)液が漏れたり密閉が無くなったら交換することなどです。また、かさぶたがあったり、筋肉や骨に至るような深い傷での使用は危険なのでやめておきましょう。
2004年05月16日(日)掲載
 
RICE(ライス)って何?
 RICE(ライス)は、ねんざや打ち身、肉離れ、骨折などの外傷(けが)をしたときに行う救急処置の頭文字で、Rest(安静)、Icing(氷冷)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)を意味します。
 外傷時の内出血は傷が治るための大切な過程です。しかし過剰な内出血は、血の流れを悪くし回復を遅らせます。そこで、けがの部分を軽く圧迫し、心臓より高く上げて安静にすることで、血流を保つことが大切になります。中でもIcingは重要です。氷水を入れたビニール袋を二十〜三十分間患部に当てた後、三十〜四十分間休むというのを繰り返すことで内出血部の血管が収縮して止血し、腫れがひきます。Icingは傷を負った後二十分以内に開始しましょう。
 最近、けがをした人が湿布剤を貼って来ることが多くなりました。湿布剤には消炎剤が入っており、炎症を抑えたり痛みを軽くする効果があります。しかし独特のスーッとした冷たい感覚は、湿布剤の水分の蒸発やハッカ刺激によるものであり、患部の温度はさほど下がっていないのです。湿布ではなく、Icingをしましょう。ちなみに温湿布には唐辛子が含まれており、その刺激で局所の血流が上昇し、多少温度が上がるため、傷を負った直後はもとより炎症の強い急性期には使わない方がよいでしょう。
 けがをした時のRICEは二十四時間以内が目安です。受診するのであれば、その間に行くことを勧めます。
2003年12月21日(日)掲載
 
「やけどの痛み」
 火を使うことを覚えた人間は、その火を使うがゆえに「やけど」で痛い目に遭うことがあります。
 痛みは真皮までの浅い傷でより強く感じ、皮下に及ぶ深い傷ではむしろ痛みを感じないという特徴があります。やけどは浅い傷と深い傷が混在しており、この浅い部分が痛むのです。
 傷はこすったり、乾燥させたり、消毒したりすると痛みますが、このように痛む時は傷の治りが悪くなります。痛みを早く取るには、傷の表面を密閉して空気に触れさせないことと、傷を湿った状態にすることが大切です。
 例えば、傷を乾燥から防いでくれる油性の軟こうを厚く塗ると痛みが軽くなります。しかし、軟こうがガーゼに吸収されるとまた痛みが出てきます。このような時、ハイドロコロイドドレッシング材という特殊な粘着剤の付いた板状のドレッシング材(傷を覆うもの)を使うと傷が密閉され、次の交換時まで痛みがコントロールされます。
 厚生労働省は二〇〇一年二月からハイドロコロイドドレッシング材を、熱傷(やけど)だけには使えないような表現をし、県では〇二年から熱傷に使えなくなりました。ただ、熱傷潰瘍(かいよう)には使えるという解釈もあり、現場は困惑しています。どのような傷でも治る仕組みは同じなのですが、やけどの治療に有用な一つの方法が危機に面しています。
2003年05月18日(日)掲載
 
「かさぶたの功罪」
 傷ができてそのままにしておくと、かさぶたができ痒(かゆ)くなります。浅い傷の場合は、かさぶたを取ってもまたすぐにかさぶたができて、二、三回繰り返すと皮膚ができて治ります。
 しかし、傷が深いと、かさぶたを取ろうにもなかなか取れず、やがて細菌に感染して痛くなってきます。この段階で医師にかかる人が多いと思いますが、やや遅すぎます。
 かさぶたは、傷の表面が乾くことで傷の表面の細胞が死んでできるものです。かさぶたの下にはゼリー状の液がたまり、この液の中で細胞の分裂が盛んになって傷は治っていきます。しかし、かさぶたは細菌を通してしまうことが欠点で、傷が深いと治るまでに時間がかかり、そのうちかさぶたの下で細菌が増殖して感染してしまうのです。
 深い傷を負った場合は、感染させないために、かさぶたを作らないよう傷を乾燥させないで治療する方法を勧めます。医師はこの治療に、油性軟膏(なんこう)や皮膚を密閉する板状の製品(創傷被覆材)を使います。傷が皮膚の下まで及ぶような場合は、医師にかかり、かさぶたを作らないように処置を受けることが大切です。
 これまでは長年、傷は消毒して早く乾燥させ、かさぶたをつくって治すことがよいと考えられてきましたが、皮膚のメカニズムが徐々に解明され、傷を乾燥させるより、ぴったりと覆ったほうが早く治るということがわかり、ケアの方向性が大きく変わりました。
2002年12月15日(日)掲載
 
「キズのあるときの入浴」
 昔から「体にキズのあるときは入浴してはいけない」というのが常識でしたが、実は間違っている場合が多いようです。
 キズの感染は、既にキズの中にいる細菌が増殖する場合と、外から細菌が侵入して増殖する場合とがあります。
 既にキズが感染しているケースでは、キズを覆うカサブタ(痂皮)などを切除してキズを開いた状態にします。その後は、できるだけキズの中をきれいに洗い流すことが大切です。この時に入浴やシャワーを行うと、キズの中がより速くきれいになることは一般的に知られています。
 では、キズが感染していない状態での入浴はどうでしょうか。キズの周囲皮膚には細菌がいますが、ガーゼ固定用に使ったテープの粘着剤や垢(あか)などの異物を栄養源として増殖し、キズに侵入します。この予防にはキズの周囲皮膚を清潔に保つことが大切で、入浴やシャワーが効果的です。
 さらに、キズは温めると血流が増えることから、入浴によって皮膚の中の免疫細胞も元気になり、感染予防効果のあることも証明されています。
 このようにほとんどの場合キズがあっても入浴は可能で、むしろ良い効果をもたらします。どうしても怖いときは、キズの部分に特殊なフイルム材を張って密閉し、入浴する方法もあります。
2002年07月21日(日)掲載
 
「なぜ傷治療は痛いのか」
 切り傷、すり傷、やけどなど、傷に痛みは付き物ですが、痛みには何か意味があるのでしょうか。それは何億年もの進化の過程で、痛みを避けるように行動してきた動物が、今生き残っているからだと思います。つまり痛みを避けることは傷にとって有利であり、生存率を高めて子孫を増やすことができたのでしょう。
 傷にとって痛い行為とは、傷ついたところをこする、たたく、引っ張ることなでです。確かに傷にとって不利になっていることが分かります。
 さて、傷を処置するときにも痛い行為があります。傷を消毒したり乾燥させること、傷に張り付き食い込んだガーゼを引っ張ることなどです。実は、これらはすべて、傷の治癒にとって有害なのです。
 消毒薬は傷の表面の免疫細胞も障害するため、かえって治癒が遅れてしまうのではと、以前から懸念されていました。一九八二年の実験で、傷を消毒すると逆に細菌の感染率が高くなることが分かりました。また、傷を乾燥させるとかさぶたができますが、このとき傷は〇・五ミリ深くなって悪化します。
 最近では、処置の際に使うガーゼも、傷に食い込まず固着しない製品が多数出てきました。このように、現在では傷を痛くさせずないように治療するようになってきています。
2001年12月16日(日)掲載
 
「やけどの治療に変化の兆し」
 暑い日が続きますが、この暑い季節でも「やけど」の患者さんは数多く来院します。やけどは熱による皮膚の組織障害ですが、その発症および治療には、これまで分らないことが多くありました。
 高熱で損傷した皮膚は、熱が去った後も持続的に活性酸素を発生させます。この活性酸素は細菌を殺すと同時に、やけど周囲の健康な組織をも破壊する力があります。受傷後三十分は冷水などで温度を下げ、活性酸素の発生を抑えます。
 こうしてやけどの進行を止め、処置に移ります。やけどの傷を乾燥させ表面にかさぶたを作ると、傷は約〇・五ミリ深くなることが最近分かりました。そこで、やけどの傷を乾燥から防ぐ新しい方法「閉鎖性ドレッシング法」を選択します。このとき用いるのが、ハイドロコロイドドレッシング材という板状のドレッシング材(傷を覆うもの)です。
 これを用いると、やけどはかさぶたを作らずに治り、不思議なことにやけどの痛みもなくなります。実はやけどになると皮膚の防御機能が壊れ、乾燥のような軽い刺激でも痛く感じるのです。ドレッシング材でやけどの部位を密閉し、乾燥などの外部刺激を避けることで痛みがなくなると考えられています。
 日本は世界でもいち早く、二十年前からこのドレッシング材が医療保険で使えます。痛みがなく早くきれいに治すこのドレッシング材は、今後急速に普及するでしょう。
2001年08月26日(日)掲載
 
「床ずれ予防はずれ予防」
 褥創(じょくそう=床ずれ)は、栄養状態の悪い寝たきりの人にできやすいものですが、その名の通り“ずれ”も大きく関係しています。ズレとは何でしょうか。
 ベッド上に身体を起こし食事をしているとき、力の弱いお年寄りなどは姿勢を保てず、身体が次第に下がってきます。このとき、下がろうとする身体と、寝具や下着などに接触して残ろうとする体表との間に「引っ張り力」が働きます。この引っ張られる力のことをズレと呼びます。皮下の組織にズレが働くと、血液の流れが悪くなります。
 ズレが起こるところは、仰向けに寝たときに圧迫される場所とほぼ一致します。したがって、寝ているときは圧迫によって、起きていてもズレによって血流の悪い状態が続きます。持続的な血流障害の結果、皮下の組織は壊死(えし)し、褥創が発生するのです。
 さらに悪いことに、ズレの際は皮膚表面が摩擦のために傷つき、はがれやすくなります。表皮剥離(はくり)が起こると、褥創は一気に悪くなります。ズレは車いすに乗ったとき、体位交換で横向きにしたとき、移動しようとして身体を引きずったときなど、さまざまな状況で発生しますが、いずれも褥創の治療を長引かせる原因になります。
 ズレ予防は「ベッドで身体を起こすときの角度は三〇度までで、ひざの下にモノを入れる」「車いすでは腰とひざの曲がる角度を九〇度にする」「体位交換は二人でする」などを心掛けてください。
 床ずれ予防はズレ予防、床ずれ治療にもズレ予防が大切です。
2001年04月15日(日)掲載
 
「床ずれが一気に進むわけ」
 褥創(じょくそう=床ずれ)はお尻の仙骨部のように、骨が飛び出したところによくできます。寝た姿勢では、この部分が体重によって圧迫され続けるからです。骨と体表の間に挟まれた皮膚や皮下組織、筋肉などが長時間圧迫を受けると、血行障害から組織が死んで褥創ができるのです。
 体の表面から順に、皮膚、皮下組織、筋肉と続きますが、圧迫の影響を一番受けるのはどこでしょうか。皮膚が接するベッドや布団の表面は平らですが、骨は出っ張っているので、影響が一番大きいのは骨に近い筋肉や皮下組織です。さらに体のすべての組織の中で一番血行障害に強いのは皮膚で、逆に皮下組織や筋肉は血行障害があるとすぐに壊死(えし)してしまいます。
 というわけで、目で見ることができる皮膚にほとんど変化がなくても、褥創は皮下組織や筋肉ではすでに始まっているのです。だから、血行障害が皮膚に及んで黒くなったときには、すでに筋肉に至るまでのすべての組織が壊死しているわけです。それで、黒くなった皮膚をはがすと一気に骨に至る深い褥創になったように感じるのです。
 皮膚が壊死する前、つまり皮膚が赤くなったり皮下出血が見える程度のときに、除圧マットレスなどで圧迫を除去し栄養を調えると、皮下組織や筋肉を再生させることができます。
 褥創を抑えるには、骨の飛び出したところをよく観察し、皮膚障害の軽い時期に発見して早期に対処することが大切です。
2000年12月17日(日)掲載
 
「栄養療法で床ずれ予防」
 寝たきりの人の床ずれ予防には、お尻の骨の飛び出したところ(仙骨部)などを圧迫しないようにすることが大切ですが、栄養面での注意も欠かせません。しっかり食事を摂っていれば寝たきりでも床ずれになりませんが、肺炎などで食欲が低下すると、二、三日で仙骨部が赤く、さらに黒くなって床ずれになります。
 私たちの体は心臓や肝臓、胃腸など、多くの器官が組み合わさってできています。各器官は無数の細胞で作られ、その活動にはエネルギーが必要です。また新陳代謝といって、すべての細胞は一定の割合で新しく置き換わります。新陳代謝にはエネルギーのほか、タンパク質が必要です。
 食事をしない状態が続いても、細胞は体に蓄えた栄養を消費して生きています。しかしエネルギーとして蓄えられた糖質は一日ももたないので、次に脂肪が利用されます。新陳代謝用のタンパク質は筋肉を壊して利用します。このような仕組みで、人は水分さえあれば一ヶ月近く生き延びることができるのです。
 しかし、栄養不足の状態では治ったばかりの傷や傷んだ組織などのタンパク質も壊れます。寝たきりの人はもともと筋肉量が少ない上、仙骨部などの皮膚や皮下組織は圧迫が加わって傷んでいるため、一気に壊れて床ずれが完成してしまうのです。
 食事量減少が二、三日続くようであれば、栄養士や医師に相談して栄養療法を始めてください。もちろん床ずれ治療でも栄養改善が基本になります。
2000年06月18日(日)掲載
 
「床ずれの予防と治療」
 寝たきりの状態が長くなるとできる厄介なものに床ずれがあります。お尻の骨が飛び出したところ(仙骨部)にできることが多く、便や尿で汚れやすく、すぐに悪化して治りにくい状態になります。以前は「床ずれは治らない」と考えられていましたが、今では手間は掛かるものの治ることが分かってきました。治療にはまず、床ずれの原因を知ることが必要です。
 床ずれとは、体を動かせない状態で横になっていると、仙骨部など骨の飛び出したところの筋肉や皮膚などが圧迫のため血が通わなくなって腐り、潰瘍(かいよう)になった状態をいいます。従って予防や治療には、なんといっても骨の飛び出した部分に圧迫が加わらないようにすること(除圧)が大切です。これまでドーナツ状の枕(円座)を用いて床ずれのところを浮かすと良いとされてきましたが、これでは周囲に強い圧が加わることから、かえって床ずれが広がると分かり、今では使われなくなりました。
 正しい除圧の基本は、頻繁に体を動かすこと(体位変換)と、圧迫除去マットレス(エアーマットレス)を使うことです。エアーマットレスはある程度の厚みのあるものが必要です。自治体によっては高齢者に貸し出す制度もあるので、市町村役場に相談してみるとよいでしょう。個人的に購入する場合は、七〜十万円くらいが目安になります。床ずれの予防と治療において、原因療法となるエアーマットレスは必須の用具だと知っておいてください。
2000年03月19日(日)掲載
 
「ストーマって何?」
 ストーマとは癌(がん)や炎症・外傷などのため、おなかに作られた便や尿の出口のことです。俗に「人工肛門」とも呼びます。日本でストーマを作る手術は年間一万四千件くらいあり、ストーマを持つ人は九万人以上いると考えられています。ストーマを持つことで便や尿をスムーズに出せ、日常生活も普通に送れるようになります。
 ストーマから出る便や尿は、一般的に、おなかに付けた袋にためます。袋をおなかにつける技術は近年大変進歩し、入浴や激しい運動も可能になりました。ストーマ装具の使い方を指導する専門看護師も養成されています。
 しかし、ストーマ装具も万能ではなく、使いやすいストーマを作ることが大変重要です。なぜならストーマの位置や形が悪いと、便や尿漏れが起こりやすくなるからです。そのため、手術前にストーマの位置決めを行い、形も平坦ではなく突出したものを作ります。このように使いやすいストーマを作る努力は手術前から始まるのです。
 それでもいろいろな事情で、便や尿の漏れやすいストーマになってしまう場合があります。このようなとき専門看護師がいろいろと工夫して、何とか普通の社会生活ができるように指導します。
 手術で便や尿の排泄法が変わることは大変ショックなことですが、手術前から医師とよく話し合い、またストーマを持った後も専門の看護師のアドバイスを受けることが大切です。
1999年11月  (日)掲載
 
「キズは自然に治る」
 すり傷や切り傷は消毒して薬をつけますが、実はそんなことをしなくてもほとんどは治ります。私たちの体に自然治癒力が備わっているからです。
 この自然治癒力を活かすため、手当てをする上で大事なことがあります。(1)傷を洗ってきれいにする(2)正しく止血をする(3)傷の消毒をしない−ことです。犬や猫は傷をペロペロなめますが、これは傷の中の異物を除去しているのです。しかし、私たちの口の中はあまりきれいとはいえないので薦められません。家庭でまずやってほしいのは、流水で傷に付いたゴミをきれいに洗い流すことです。
 傷を洗った後はきれいなガーゼやタオルで静かに圧迫します。五分ぐらいで止血するはずです。出血部の血管は自然に収縮して血流が落ち、血小板などの働きで血は自然に止まります。
 最後に傷の消毒ですが、化膿した傷などひどいもの以外は消毒剤を使うとかえって感染が起きやすくなります。というのは、体には白血球が傷に集まり、ばい菌を殺す防御機構がありますが、消毒剤はこの作用を障害し、かえってばい菌が増えてしまうからです。
 中には自然治癒に反する薬剤もあるので注意が必要です。例えば、傷にパウダー状の異物を付着させる薬剤は、汚い血液をキズの中に閉じ込める上、かつ消毒剤を含むため、感染を引き起こします。国民生活センターからも警告が出ています。傷に対する正しい知識を持ち、私たちの自然治癒力をもっと信じたいものです。
1999年04月18日(日)掲載