栄養療法で床ずれ予防

2000年6月18日

 寝たきりの人の床ずれ予防には、お尻の骨の飛び出したところ(仙骨部)などを圧迫しないようにすることが大切ですが、栄養面での注意も欠かせません。しっかり食事を摂っていれば寝たきりでも床ずれになりませんが、肺炎などで食欲が低下すると、二、三日で仙骨部が赤く、さらに黒くなって床ずれになります。
 私たちの体は心臓や肝臓、胃腸など、多くの器官が組み合わさってできています。各器官は無数の細胞で作られ、その活動にはエネルギーが必要です。また新陳代謝といって、すべての細胞は一定の割合で新しく置き換わります。新陳代謝にはエネルギーのほか、タンパク質が必要です。
 食事をしない状態が続いても、細胞は体に蓄えた栄養を消費して生きています。しかしエネルギーとして蓄えられた糖質は一日ももたないので、次に脂肪が利用されます。新陳代謝用のタンパク質は筋肉を壊して利用します。このような仕組みで、人は水分さえあれば一ヶ月近く生き延びることができるのです。
 しかし、栄養不足の状態では治ったばかりの傷や傷んだ組織などのタンパク質も壊れます。寝たきりの人はもともと筋肉量が少ない上、仙骨部などの皮膚や皮下組織は圧迫が加わって傷んでいるため、一気に壊れて床ずれが完成してしまうのです。
 食事量減少が二、三日続くようであれば、栄養士や医師に相談して栄養療法を始めてください。もちろん床ずれ治療でも栄養改善が基本になります。