第24回 「拘縮の強い方の褥創の特徴」

2006年3月16日

 症例検討は7例提示されました。今回は拘縮の強い方の褥創の問題が主に出されていました。また栄養状態の関与が問題にあげられていました。

 最近経験した褥創で、大変難渋しどちらかというと失敗した症例として頭部褥創2例下腿外側部褥創2例ASOの足趾褥創1例の5例まとめて提示されました。
 「頭部褥創」症例は2例提示され、いずれも心肺停止後の低酸素脳症による植物状態の症例に発症した頭部褥創でした。気管切開がおかれ、人工呼吸器に接続されています。Albは2.5、Hb 7.1といった低栄養の状態で、なぜか顎関節脱臼を併発していたとのことでした。頚部は伸展拘縮し頭が反り返った状態で、頭頂部に近いところに褥創を発症していました。胃瘻を作るもうまく使えずTPN管理となっていました。局所療法はハイドロサイトまたはラップ療法が選択されていました。
 この例に対し、汗がひどいかとの質問があり、体はひどかったが頭はそうでもなかったとのことで、痙攣してマットレスに頭をこすることが誘因になったのではとの返事でした。
 対策として、まず頭髪を剃ることが基本だろうとの意見がありました。また、エアーマットレスに頼りすぎて頭がだんだん反り返っていくことと、頭部の除圧のため肩の下に枕等を入れることで頭が反り返っていくことが指摘されました。そのため、肩ではなく、首と後頭部に広範囲に体圧分散用具(ビーズパッドなど)を用い、広い範囲で受けるようにすることや、頭部のエアーマットの下に枕などを入れて頭をむしろ持ち上げるようにしてエアーマットの体圧分散によって広く受けるようにするなどのアドバイスがありました。
 「下腿外側部褥創」に関しても2例提示があり、いずれも男性で、股関節が外転・外旋状態で、かつ膝が屈曲拘縮をしており、踵の褥創の治療目的のため、膝と下腿部に体圧分散具を入れて下腿を浮かせるようにした結果、下腿外側部に褥創を発症した例でした。いずれも壊死組織をデブリードメントしていくも改善無く、結局褥創は改善傾向をみることなく死亡に至った例でした。
 会場からは同様な症例の経験が語られ、両側下腿外側に褥創を発症した例に対し、膝~大腿部外側に枕を入れて下腿の位置を改善することで、褥創を治癒させた経験が話されました。また、頻回に体位を変えることの必要性が話されました。
 男性は大腿部が外に開く例が多く、女性は膝がぶつかる例が多いようで、これは男性はあぐらをかき、女性は内股になっていることが原因ではないかとの意見が出ました。これに対して、女性もけっこう大腿が開く例が多く、一概に言えないとの意見が出されました。
 いずれにしてもポジショニングが大切で、ギャッチアップをする時も膝を進展させる訓練をし、1~2分の短時間でもよいから、できるだけ端座位を取らせるなど、もっと寝たきりにせず起すことが大切との意見もありました。
 「ASOの足趾褥創」は1例提示されました。第5趾のMP関節部に褥創を発症し、膿の流出もあり、腐骨のデブリードメントが勧められていたとのことでした。また、同部の第1・2趾の重なる部分にも褥創ができていました。
 ASOの足褥創は、以前私の講義でも取り上げたことがあり、大変難治です。特に糖尿病などの場合、末梢神経障害のため小さめの靴を履いても苦痛が無いことで発症する例があります。また、ベッドなどで寝ている時、布団の先がベッドから落ちているとその重みがちょうど足のMP関節部にかかることがあり、そのための発症にも気をつける必要があります。

 6例目は「関節拘縮と骨突出例での多発褥創」の紹介でした。80歳代のアルツハイマー病の方で、しだいにむせが出てきて、誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、寝たきりとなり、四肢屈曲拘縮が強くなり、骨突出(円背)もひどくなったようです。Hb 7.5、Alb 2.7と低栄養状態でした。介護施設で長期間みてしまい、医療施設への紹介が遅かったことが問題ではないかとの発表者からの問題提起でした。
 栄養改善をすべきとの意見が多数でましたが、家族は胃瘻造設に反対でした。その理由は、胃瘻を作ると入院・入所ができなくなり、在宅になるのでイヤとのことでした。これに対し、現状はどうなっているのか会場に質問したところ、やはりPEG等があると入所は難しくなるようでした。胃瘻があると介護が難しくなり人手がかかるため、受け入れるところでも胃瘻の受け入れ人数に上限を決めているようでした。
 家族に色々聞いてみると、低栄養になるとひどい褥創になるなど介護上の問題が多数出てくることを家族は知らなかったとのことでした。
 また、なぜ両腸骨部に褥創ができるのかとの会場からの質問に対し、四肢屈曲拘縮が強く、かつ円背があるため、仰臥位ができず、90度側臥位になってしまうためだろうとの返事がありました。
 高齢者における肺炎は、ほとんどが誤嚥性肺炎であり、この例では、もう少し早く、例えば摂食嚥下障害があった時点で医療介入し、摂食嚥下訓練、口腔ケアを開始するべきだったとの意見がありました。

 7例目は「強い屈曲拘縮のある超低栄養状態の褥創」のあるパーキンソン病の70歳代女性症例でしたが、食欲低下と発熱で入院してきました。感染を伴う褥創で処置によって改善しました。食事量は少なく全く動けないため入院・入所でのケアが必要と考えられましたが、在宅の希望が強く家に帰りましたが、10日でひどい褥創に悪化しました。以後も外来で褥創をみられていましたが、食事量も少なく、意識はけっこうしっかりしているものの、強い屈曲拘縮があり全く動けません。
 1日にカロリーメイト1つと、ラコール1パックのみの摂取で、300~500Kcalしか摂っておらず、Hb 9.1、Alb 2.8と低栄養でした。褥創は背部・臀部・両大転子腸骨部に合計8ヶ所ほどみられ、痂皮や感染等のあるものもみられました。処置は訪問看護師が週5回入っており、イソジンゲルとガーゼで行われていました。
 発表者からどのように改善していけばよいのかとの質問が出されました。 エアーマットは入っていれば何でもよいのではなく、高機能タイプが必要で、かつエアーの入りやシーツの用い方などのチェックが必要だと話されました。胃瘻を作ってはとの意見が出されましたが、家族は拒否しているようでした。5日の訪問看護を減らして、ヘルパーを入れ、食事介助をしてもっと栄養を入れてはとの意見がありましたが、経口摂取量はこれが限界だったと報告されました。また、ドレッシング交換は看護師がしており、訪問看護を減らして創傷ケアを2~3日に1回にするのは、このキズでは危険との意見が出ました。
 介護施設の方がよいのではとの意見に対し、息子がこの母親ともう一人の父親の世話をしており、一人が入院すると息子が大変になるため母親は在宅を希望しているとのことでした。また金銭的にも在宅の方が安く、入所は困難とのことでした。同様の理由でデイサービスも使いたくないようでした。
 栄養剤のカロリーメイトをエンシュアリキッドなど、保険の効くものにしたほうが安いのではないかとの意見が出ました。また、ケアマネが様子を見て、より安くて実効性のあるプランを立てるよう励ますことも勧められました。何と言っても主治医などケアの中心の人は、一度在宅を訪問し問題点をはっきりさせるようにしたほうがよいというアドバイスもありました。結局、現場を知るケアマネと主治医、看護師、栄養士でケアプランや治療方針を相談し、ベストな方法を検討することがよいとの結論になりました。

 今回は以上のように拘縮の強い例での褥創の問題が多く語られました。また、栄養状態の悪い例が多く、摂食嚥下障害の関与がみられました。今回の例では、早期の摂食嚥下に対する対策とともに、ポジショニングの大切さ、寝たきりにさせないことの大切さも感じました。