第16回 「強拘縮例の褥創治療」

2004年7月15日

 症例検討は、大腿骨頚部骨折を期に寝たきりとなった方が、股関節や膝の拘縮が大変強くなり、膝を牽引にて延ばそうとしたため、引っぱり用具によって下腿に褥創が発症。また踵部にも痂皮を伴う深い褥創ができた症例でした。この例に対し、ベッドのギャッチアップをするとのことで薄めのエアーマットレスにしたことと、ギャッチアップ時に踵への圧迫が加わったことが原因で踵に褥創は一時的に悪化しました
 これらの褥創に対し、頻回の体位交換を中心としたケア法の変更によって治癒させえたとの報告でした。また、食事摂取量が改善し、高齢にもかかわらず、全介助によって1時間の食事時間で全量摂取という状態に持ってこれたのも大変な介護力でした。
 この症例に対し、悪化の原因は、イソジンで消毒をしたためではないか、創の洗浄をしなかったためではないか、等の意見が出ました。また、途中から創部の洗浄をしたのが治癒に向かう原動力になった可能性が、会場からの質問によって明らかになりました。
 さらに、拘縮の強い方への対応として、より除圧効果の高いエアーマットレス使用や、ギャッチアップ時の踵の除圧法のために膝の部に枕などを入れる工夫などの提案が有りました。また、拘縮の強い方を車イスに乗せることで拘縮が改善する例や、車イスに乗せるためにオーバーテーブルなどの併用の仕方、姿勢保持クッション、円背用の車イス、理学療法士がおこなう車イスへの乗せ方、等の経験や意見がどんどん出てきました。これらの工夫は大変革新的であり、今まであまり学会や教科書などでは触れられなかった現場ならではの意見です。
 このような方法を実際に患者さんに用い、拘縮が軽減して行く過程を写真等に撮ることができたならば、これは大変な報告になるでしょう。このように、理学療法士とのコラボレーションの必要性が感じられました。そして、この例では理学療法士にコンサルテーションしてみることが薦められました。
 その他、一般質問として、滲出液の量と創の状態の関係についてディスカッションされ、滲出液が予想より多い場合、感染を考えたほうがよいとの意見がありました。
 さらに、閉塞性動脈硬化症で糖尿病の方の足の壊疽に対して、ミイラ化療法が行われている。との報告が有り、これも湿潤にしたほうがよいとか、早く切断手術をしたほうがよいなどの意見がでました。また、動脈閉塞が有っても、プロスタンディン軟膏などを使い湿潤環境下で管理すれば、切断部の壊死を予防したり改善できることも示されました。