第21回 「拘縮と体位保持」

2005年7月21日

 今回の症例提示は、2例ありましたが、いずれも拘縮が強く経管栄養投与法の問題がありました。

 1例目は、「臀部に発症した難治性褥創」として、現在進行形の70歳の症例でした。多発性脳梗塞で寝たきりとなり、下半身完全麻痺があり、左下肢が強度の屈曲拘縮、右下肢は軽度屈曲拘縮しています。肺炎によって褥創が発症したようです。胃瘻が造設されており肺炎の状態が安定し、転院してきた症例でした。
 左臀部の褥創は不良肉芽の下に筋膜に沿ったポケットがあったことから、まず切開手術が行われ、その後局所療法として密閉吸引なども行なわれ、ほぼ閉鎖と考えられた状態から、肉芽の下に膿瘍が発症し再切開が必要となりました。密閉吸引で良好な経過をとっていますが、今後の再再発が危惧されています。
 この例は、早期から高機能の体圧分散エアーマットレスが導入され、栄養投与もカロリー・蛋白質・水分量が考慮されており、高度なケアが行なわれています。
 これに対し、ポケットがある場合、切開を早く行なうのは良いことだとの意見がありました。体位交換についての質問があり、高機能のエアーマットレスであるので体位交換はあまり意識していないとの返事に対し、やはり必要との意見や、実はこの例では看護師サイドではやっているとの反論もありました。
 拘縮の強い例では、踵の除圧が大切であり、この例ではうまくいっているとの意見が出ました。体圧分散について臀部を浮かせているのになぜ臀部に褥創ができ、またなぜ仙骨にできないのかとの疑問が出されました。この点に関し、実は経腸栄養投与時にすぐに口腔への逆流がおこり肺炎を起こしやすいため、少なくとも30度のギャッチアップをしている。注入に時間がかかるため、1回3~4時間の注入を1日3回行ない、この間は一定の体位でギャッチアップしたままとなることが話されました。
 これに対し、栄養士から水分2000mlも要らず1500ml位ではどうか。しかし、アルブミン値が減少傾向にあるため、投与カロリーは逆に1200Kcalから1400Kcalへ増加させてはどうかとの提案がありました。その際トロミなどを付けて注入してはとのアドバイスがありました。トロミをつけることで、ギャッチアップ角度をもう少し(例えば15度位)に減らせないかとの意見も出ました。
 これに対し、トロミをつけると50mlの注射器での注入に人手が大変取られるのが問題との意見も出されました。いずれにしても管理栄養士と良く相談することが勧められました。
 切開手技については、切開範囲が少なすぎた可能性のある点、および筋膜の壊死が観られ、これがデブリードメントされる前に肉芽を盛り上げたために膿瘍となって再発した可能性が指摘されました。したがって、今後再再発するようなら、ゾンデでポケットの有無などを確かめ、思い切って大きく深く切開することも勧められました。

 2例目は「人工呼吸器装着・経管栄養患者の褥創のケアを考える」として、脳梗塞・パーキンソン病の方が誤嚥性肺炎のために入院し、気管切開を置き、人工呼吸器管理となっている症例でした。EDチューブによる経管栄養が行なわれましたが、全身状態の変化に伴い、仙骨部褥創の悪化、軽快、悪化を繰り返し、亡くなられました。
 この例も当初より高機能エアーマットレスが導入され、栄養管理も計画的に行なわれていました。褥創が改善した時期は、中心静脈栄養から経管栄養への切り替えが可能であった時期、横シーツ使用をやめた時期、エアーマットレスの換気機能や体位交換枕を変更した時期でした。また、悪化した時期は、肺炎の状態が悪化した時期、嘔吐がひどく経管栄養の投与時間が長くなりギャッジアップ時間が長くなった時期でした。
 この例も、経管栄養の逆流による注入時間が長くなることが問題となった例でした。
 気管切開を置き人工呼吸器管理の場合、ギャッチアップやギャッチダウン時のシーツのズレを直すことが難しかったとの悩みが述べられました。これに対し、ほとんどの施設では、2~3人でシーツを直し背抜きをしていると答えていました。また、ギャッチダウンではそのまま側臥位にすれば、体位交換・背抜き・シーツの直しが同時にできるのではとの意見も出されました。
 経腸栄養投与時間の短縮に、水分を末梢点滴で500~1000ml行ない、経腸からは高濃度の栄養剤を注入することで注入時間を短縮できるのではないかとの意見が出されました。

 今回の2症例ともに、経腸栄養剤の投与に時間がかかることが、褥創の治癒を遅らせる原因の一つになったと考えられました。また、下肢の拘縮が2例ともにみられ、拘縮の強い下肢がある場合の体圧分散法が議論されました。
 「拘縮のある下肢の場合、ベッドの下肢挙上機能を使ってもエアーマットレスに却って踵が押し付けられることがあり、どのようにすれば良いのか」とエアーマットレスメーカーに対し参加者から質問がありました。これに対し、メーカーからは「せっかくのエアーマットレスの体圧分散効果をを損なわないため、エアーマットレスとベッドの間に膝の角度に合うよなものを、適切な位置に挿入し、そのうえで、部分的な体圧分散用具を追加していく」ことが勧められました。聞けば当たり前ですが、これを原則としていくことを確認しました。  また、拘縮の強い下肢の場合、内転位の両大腿間には体圧分散用具(ビーズパッドなど)を挿入し、膝が強く屈曲した例では下肢全体で重さを受けるように工夫し、踵に関しては少しだけ接触する程度に持ち上げ、側臥位は上半身のみ傾けるようにするのが良いようだとの意見が出されました。
 また、適切な体圧分散用具および方法の選択には、体圧測定器を使うことが勧められました。

 以上のような症例検討会でしたが、拘縮および体位保持についてはまだまだはっきりとした解決法が示されていません。これからも工夫を行ない、良い結果が出れば示してもらいたいと思います。また、最新の情報収集も大切だと思います。