おむつと皮膚のびらん

2020年3月8日

びらんとは、表皮が失われた状態であり、真皮が露出しています。ちなみに、真皮も失われると潰瘍と呼びます。びらんとなった皮膚の表面は生きた細胞であるため、滲出液で被われ、保護されています。しかし、びらん面が乾燥したり、物理的・化学的に刺激されたりすると疼痛を伴います。

・発生メカニズム

おむつをしているときにびらんが発生するメカニズムを解説します。皮膚が長時間尿や汗などにさらされると、皮膚が浸軟(ふやけること)します。あるいは、おむつの中が高湿度になるため、皮膚は浸軟します。皮膚が浸軟すると、保湿成分の皮脂膜、天然保湿因子、細胞間脂質が次第に失われていき、ドライスキンになります。ドライスキンでは、皮膚のバリア機能が低下し、外界からアレルゲンや細菌が皮膚の中に入り込み、炎症を起こします。炎症部位には白血球が集まり、組織破壊が進行していきます。その結果、びらんへと進行します。なお、下痢便の失禁では、便中に含まれる消化酵素が皮膚を消化していくため、一気にびらんが発生します。

尿は時間が経つとアルカリ化して皮膚を融解するだけではなく、細菌増殖を促進するため、皮膚障害がより起こりやすくなります。

・おむつなど使用時の対応法

びらんに至った原因を取り除くことと、皮膚の保護を行います。びらんとなった皮膚に便や尿、異物などが付着している場合はよく洗浄します。このとき、皮膚の保湿成分を取り過ぎないよう注意します。皮膚の保護には、びらん面を湿潤に保つことと、外部からの汚染を防ぐことが重要です。一気に解決する方法として、ハイドロコロイドドレッシング材(例:デュオアクティブ®)を用いた閉鎖湿潤療法があります。問題点としては、貼付部に摩擦がかかると剝がれること、尿や下痢便の量が多いと浮き上がって剝がれることがあります。しかし、使用できると劇的に改善します。

開放しつつ湿潤状態を保つ方法として、油性軟膏やクリーム剤を使う方法、あるいはバリケア®パウダーなどを使う方法があります。油性軟膏はセキューラ®POが優れており、アズノール®軟膏やワセリン®などが次に続きます。皮膚に感染徴候が見られるときは、ゲーベン®クリームを用います。

いずれもびらん面に厚めに塗布し、ガーゼは使わず、おむつあるいは尿取りパッドで直接被い、おむつ交換時や、創部チェック時に軟膏類を追加塗布します。油性軟膏やクリーム剤は尿や便とビラン面の間に留まり、汚染を防ぐとともに創面の乾燥化を予防します。また、便などで汚染した場合には、洗浄せずにティッシュペーパーやロールペーパーで拭き取ることができます。