第32回 「医師と看護師の連携」

2007年9月20日

<口から食べさせる努力が実った褥創例>

 以前提示された、脛骨・腓骨骨折患者にギブス固定を5ヶ月行い、除去時に踵部褥創が発症していた例の、その後の経過です。この方の問題は微熱が続き食事を食べようとせず、どのように栄養士が工夫しても、あるいは栄養補助食品を加えても、皆ぺっぺぺっぺと吐き出してしまうことでした。そのため栄養摂取量は減少し体重も減少していきました。
 褥創そのものは、少しずつ改善しているように見えましたが、深部に壊死が有り敗血症になるのではと危惧された時、急遽皮膚科専門医に受診されました。
 その結果深部にある腐骨を除去されました。腐骨除去後、患者は機嫌が改善し食事量も多くなってきました。一日摂取カロリーは1120Kcal、蛋白質47.4gとなり、褥創も治癒しました。

 この症例に対し、運動能はどうであったか、また胃瘻はなぜ作らなかったのかと質問されました。それに対し、認知症があり、暴力がみられ、食事を介護者に吐きかけたりしたが、ベッド上に寝たきりであった。ティルトタイプ車イスに乗せ、食事は離床して食べてもらった。100歳ぐらいと高齢で安全に口からをモットーに頑張ったとのことでした。

 会場から、100歳ぐらいで1120Kcalという状態で、なぜポケットのある褥創を治癒できたのか、との質問がありました。それに対し、介護施設での介護の連携プレーの結果であり、自力で食べられたことが重要で、生きる意欲があった。介護側も何時間かかっても食べてもらうという意気込みで皆が頑張ったとのことでした。初めは全介助であったけれど、しだいに自力摂取が増え、今では100%近く自力摂取とのことでした。フィブラストスプレーとフィルム併用も良かったとのことでした。

 皮膚科受診をすぐできたのは何か秘策があったのかとの質問に対し、以前は書類を作ってという手順だったが、今は皮膚科受診は看護師に任せられることになり、杓子定規でなくなったことで、素早く専門医の受診・治療開始が可能になったとのことでした。
 この症例は、褥創内の腐骨(壊死組織)の存在が患者の全身状態を悪くし、食欲も低下させていたようです。しかし、何としても口から食べてもらおうという介護者の熱意と、創部の異常にいちはやく気付いただけではなく、直ちに皮膚科専門医受診の手続きをとったことがその後の順調な経過と深く結びついていたと考えられました。

<さまざまな連携がみられた褥創例>

 80歳代女性。嚥下障害、左脳内出血後遺症、外傷性血胸治療後、仙骨部褥創の患者さんで、PEG造設目的で紹介入院されました。PEG造設されたあと、順調に合併症もなく栄養投与が進み、摂取栄養は900Kcal、水分1000ml、蛋白質45gの投与となっていました。
 この方は、自力体位変換は不能で四肢の拘縮が強く丸くなっておられ、亀背もみられました。意識は呼びかけに反応する程度でした。

 局所療法は、当所フィブラストスプレーにフィルムでしたが、途中からフィブラストスプレーにプロスタンディン軟膏とし、直接オムツ使用に変更になったとのことで、褥創は治癒しました。PEG中も摂食嚥下訓練をしているとのことです。

 一旦表皮化した部分は、ちょっとしたことで表皮剥離してしまいました。再び表皮化しましたが、如何に治った部分は脆いのかが解ったとのことでした。高機能マットレスに頼らず離床をどんどん図ることが大切と考えているとのことでした。その結果、当所から使っていたトライセルは他の患者へ回しより薄いものに変更したとのことでした。

 拘縮のある人の経管栄養姿勢はどうしているのか、また注入時間はどうしているのかとの質問が有り、仰臥位はダメなので側臥位を取り30度くらいベッドをギャッチアップして、時間は200ml/時以上にしないようにして注入したとのことでした。

 急性期病院であるが、6ヶ月の入院は大変ではないのか、PEGを入れたあとすぐに紹介先の病院へ戻ってもらえばよかったのではないかとの質問がありました。それに対し、亜急性病床や障害者病床のワクが有り6ヶ月くらいを限度として、それを使ったとのことでした。しかし、本当はこれらを使う場合はここへ入った後の方針を決めてから使うのだが、この例では諸般の事情があったとのことでした。この例では、在宅へ戻れない、特養へ戻れない、老健へは入れないなどの難しい問題があるようでした。

 皮膚科受診がかなりスムースにいったようで何か特別のことがあるのかとの質問に対し、以前は主治医が紹介状を書いていたが、急性の変化なのに2~3日かかり、問題となった。今では看護師の一文でもよいことになりすぐに診察してくれるように改善したとのことでした。ここでも看護師の意見がすぐに医師に伝わるコミュニケーションの道が作られていました。

 この例では、開放創として軟膏をフィルムなどで覆わずおむつで覆ったが、治癒していったけれどもこれでよかったのか、との質問がありました。それに対し、オムツは大変良いドレッシング材でガーゼなどよりはずっと良く、滲出液は吸収して皮膚の浸軟を防ぎ、プロスタンディン軟膏のような油性軟膏は吸収せず創面に残って湿潤状態を保ってくれる。もしガーゼを使うと、滲出液はガーゼから漏れて皮膚は浸軟し、しかし油性軟膏はガーゼが吸って創部は乾燥してしまうのだとの説明でした。

 皮膚科医からの指摘は、プロスタンディン軟膏は思いっきり使うようにとのことでした。思いっきりとはポケットの部分が塞がるくらいに十分使うという意味であったとのことでした。このようにオムツを使用し油性軟膏を使う場合は、たっぷりと使うことがコツでした。
 ただし、この例では滲出液が多かったのでこの方法で良かったようですが、滲出液が少なかった場合は、クリーム剤を使いフィルム材で密閉する方法も知っておくことが勧められました。いずれにしても、乾燥しすぎてもダメ、ビチャビチャでもダメという所が難しいとのことでした。

 その他気付いた点として、褥創回診によって治療法が変更になった場合、毎日長い時間勤務している責任者が理解し、他の看護師に正確に変更点を伝え理解してもらうことが重要と発言されました。

 この例でも、栄養改善が重要であり、また単に栄養改善だけではなく離床を考えたケア、および摂食嚥下訓練まで行っている総合的な見方が重要だと思います。そして皮膚科専門医と連携を密に取るとともに、ケアの質を統一するためのシステムもできていました。

 今回の2症例をふり返って、いずれも褥創を治そうという意欲がしっかりと伝わり、そのために医師と看護師・その他の職種が連携を持ってよく話し合ってケアをしていることが印象的でした。