糖尿病ではどうして血糖が高くなるのか?

 血糖が高くなる理由には2つの機序があります。その2つはそれぞれ単独で生じていることもありますが、両者が同時に存在することが多いです。

 インスリンは血糖値を下げる事実上唯一のホルモンです。膵臓で合成され血液中に分泌されますが、その主な作用は、「血液中のブドウ糖(血糖)を主に肝細胞・筋細胞・脂肪細胞に入れる」という役割です。インスリンはブドウ糖(血糖)を細胞内に取込み、結果的に血糖値は下がります。

 前述の2つの機序とは、①インスリン分泌不全と②インスリン抵抗性です。前者①はインスリンを合成・分泌する膵β細胞の障害、疲弊・細胞死に起因します。後者②は肥満・運動不足・ストレス・炎症などによりインスリンの細胞内へのブドウ糖取込みが困難な状態です。

 1型糖尿病はβ細胞が破壊される運命の糖尿病を指しており、破壊されるスピードにより劇症発症型(数日で死滅)、急性発症型(数週で)、緩徐進行型(年の単位でゆっくりと)に分類されます。2型糖尿病は分泌不全と抵抗性の合計で発症し、一般には緩徐に慢性的に進行していきます。例えば、肥満があるとインスリンは効きにくく(インスリン抵抗性)、何とか下げようとβ細胞は無理をして、より一層多くのインスリンを分泌することで血糖値を下げます。肥満が解消できないとβ細胞は疲弊していき、その結果、インスリンを十分に出せなくなってしまいます。食事・運動・薬物療法でβ細胞疲弊を除去すればある程度は回復しますが、さもないと疲弊からさらにβ細胞死へと進行します。疲弊は回復可能ですが細胞死は回復不能です。β細胞を守るためにインスリン抵抗性を改善するには肥満や運動不足の解消、つまり生活習慣が重要な意味を持つことになります。