ストーマ相談外来

 ストーマとは癌(がん)や炎症・外傷のため、おなかに作られた便や尿の出口のことです。俗に「人口肛門」とも呼びます。日本でストーマを作る手術は年間14,000件くらいあり、ストーマを持つ人は9万人以上と考えられています。ストーマを持つことで便や尿をスムーズに出せ、日常生活も普通に送れるようになります。ストーマから出る便や尿は、一般的に、おなかに付けた袋にためます。袋をおなかに付ける技術は近年大変進歩し、入浴や激しい運動も可能になりました。
 ストーマ装具の使い方を指導する専門看護師も養成されています。しかし、ストーマ装具も万能ではなく、使いやすいストーマを作ることが大変重要です。なぜならストーマの位置や形が悪いと、便や尿漏れが起こりやすくなるからです。そのため、手術前にストーマの位置決めを行い、形も平坦ではなく突出したものを作ります。このように使いやすいストーマを作る努力は手術前から始まるのです。それでもいろいろな事情で、便や尿の漏れやすいストーマになってしまう場合があります。このようなときも専門看護師がいろいろ工夫して、何とか普通の社会生活ができるように指導します。
 手術で便や尿の排泄法が変わることは大変ショックなことですが、手術前から医師とよく話し合い、ストーマを持った後も専門の看護師のアドバイスを受けることが大切です。
 当院では、専門知識を持つ院長と、専門看護師によるストーマ相談外来を行っています。完全予約制ですので、ストーマ相談外来を御希望の方はあらかじめ電話予約のうえ来院してください。ストーマ相談外来は保険診療で行っています。

オストメイトの人権宣言(UOA)

以下にオストメイト(ストーマを持つ人)世界大会での人権宣言があります。これはオストメイトに限らず全ての患者さんに共通した内容だと思い御紹介いたします。
オストメイトは

  1. 術前に十分なカウンセリング(説明・助言)の機会を与えられること
  2. 適切な位置にストーマが造設されること
  3. 良いストーマが造設されること
  4. 熟練した看護師から術後の手当てを受けること
  5. 精神的支えを受けること
  6. 個人個人に合った指導を受けること
  7. 補装具について充分な情報を受けること
  8. 社会福祉制度について充分な情報を受けること
  9. 退院後のフォローアップ(経過観察)と生涯にわたっての指導をうけること
  10. 医療従事者のチームワークによる健康管理に関する助言を受けること
  11. 全国組織のオストミーグループに関する情報を受けること

ストーマケア情報提供書

第24回北陸ストーマ研究会(平成20年9月13日開催)にて板倉洋子先生(村山医療センター看護部)に特別講演を行なっていただき、発表の際に「ストーマ情報提供書」を示しておられました。ケアの際の便利なツールとなると考えここに公開させていただきますので御利用下さい。公開に当たり許可をいただきました板倉先生に感謝致します。

褥創・創傷外来

発生機序  褥創(じょくそう=床ずれ)はお尻の仙骨部のように、骨が飛び出したところによくできます。寝た姿勢では、この部分が体重によって圧迫され続けるからです。骨…

褥創へのハイドロコロイドドレッシング材の使い方

被覆材の分類(表1)

 創傷を覆う清潔なカバーであるドレッシングの中には、「被覆材」と呼ばれる範疇に属する一群がある。これらのものは皮膚欠損が生じた創傷の処置時に用いられるもので、傷の深さによって保険請求上の規定がある。また一般的に2週間、最大3週間までと使用期間が制限されている。
 被覆材の多くは、創面に湿潤環境を作りやすい特徴を持っており、新しいタイプのドレッシングとも呼ばれる。被覆材には二つのタイプがあり、創面を覆う「閉鎖型」と、創内に用いる「充てん型」がある。閉鎖型のものに、ハイドロコロイドドレッシング材があり、被覆材としての特徴を最も出している。
 表1.被覆材の分類

使用法による分類
閉鎖型 ハイドロコロイドドレッシング材(デュオアクティブなど)
フォーム材(ハイドロサイト・ティエール)
充てん型 アルギネート材(カルトスタット・ソーブサンなど)
アクアセル・キチン・ペースト(コムフィールペースト)
ジェル(グラニュゲル・イントラサイトジェルなど)
充てんフォーム材(ハイドロサイキャビティー)
目的別分類
肉芽増殖目的 ハイドロコロイドドレッシング材・アルギネート材
アクアセル・キチン・フォーム材・ペースト
表皮化目的 ハイドロコロイドドレッシング材
浸出液のコントロール(吸収) アルギネート材・アクアセル・充てんフォーム材
キチン・ペースト
壊死組織の自己融解促進 ジェル・ハイドロコロイドドレッシング材
感染のコントロール 充てんフォーム材

ハイドロコロイドドレッシング材の利点

 単独で湿潤環境を作る:粘着面の親水性素材が浸出液を吸収し、創面に湿潤環境を作るとともに、周囲皮膚は乾燥状態を維持する。
 外部からの汚染を防ぐ:ドレッシング材の外面はポリウレタンでできており、外部からの汚染をブロックする。
 ズレに対して強い:粘着面が皮膚に接着するためズレに強い。しかし、強固ではないのでテープなど周囲を固定することが勧められる。それでもずれる場合は、むしろズレに対するケア上の問題がある。
 ドレッシングの厚みを薄くできる:褥創では大変有利である。

ハイドロコロイドドレッシング材使用の注意点

 浸出液が多いと難しい:粘着部の親水性素材の吸収力には限度があり、浸出液が多く1日2回以上交換を要する場合は周囲皮膚を障害し、また経済的にもメリットが無い。すでに感染があり浸出液が多い場合は禁忌である。
 最大3週間までしか保険適応が無い:被覆材全てに言えることである。
 深さで保険適応が異なる:薄いタイプ(デュオアクティブET、テガソーブライトなど)は真皮に至る深さ用であり、厚いタイプ(デュオアクティブ、アブソキュアウンドなど)は皮下組織に至る深さ用である。

よくある誤解

 よく「ハイドロコロイドドレッシング材を使うと感染が起きやすい」という非科学的な意見がある。創感染には3つのルートがある。一つは、既に創内に細菌が存在する場合。二つ目は、創周囲皮膚など創外から細菌が侵入する場合。三つ目は、血行性に創内へ細菌が入る場合である。ハイドロコロイドドレッシング材などで閉鎖性ドレッシング法を行うと、二つ目の創外からの細菌侵入を防ぐ効果がある。しかし、既に創内に細菌が存在する場合、創感染はどのようにしても発生する。このようなケースでは「ハイドロコロイドドレッシング材は1週間貼りっぱなしにするものだ」等の誤った知識で創処置を行っていると、ひどい創感染になるまで気付かないことがある。このようなことから「ハイドロコロイドドレッシング材は創感染を高率に起こす」という誤った情報が広まったと思われる。

具体的な使い方

  • 肉芽増殖と表皮化(ステージIIIにおいて):創内の湿潤環境を守り、浸出液を創内に留めることで、浸出液中のグロースファクターが有効に活用されて肉芽の増殖と創の収縮が進展する。肉芽の形成と同時に、創周囲より表皮化が進行し痂皮を作ることなく速やかに瘢痕治癒する。
  • 表皮化の促進(ステージIIにおいて):ステージIIでは、真皮層が創表面に露出しているため、湿潤環境にして創面の治癒環境を整えると、表皮細胞が創全面に遊走して一気に表皮化する。
  • 壊死組織の自己融解:感染徴候の無い痂皮に対し、ハイドロコロイドドレッシング材を貼用して1~2日毎に交換していく。このようにすると、痂皮の下へと出てきた浸出液が痂皮の中に留まり、浸出液中に存在するコラゲネースなどの蛋白分解酵素が十分に作用する。痂皮は白っぽく軟化してくるので、外科的にこれらを容易に切除できる。このような方法を行うと痂皮を除去したあとには既に赤色の良性肉芽ができている。
  • 浸出液が多い場合の併用法:ハイドロコロイドドレッシング材単独では浸出液のコントロールが難しい時、アルギネート材やアクアセル等と併用すると効果的である。しかし、二つ以上の被覆材を使った場合、一つしか保険請求できないことが問題である。このような時、被覆材以外のもの、例えばストーマ処置に使うハイドロコロイドパウダーを併用することがある。

最後に

 ハイドロコロイドドレッシング材は、被覆材らしい被覆材と言え、使い勝手も軟膏類とかなり異なっている。ハイドロコロイドドレッシング材の特徴をよく理解して使いこなしていくことが大変有用である。